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自然周期採卵について

[2016.01.14]

自然周期採卵とは、クロミフェンやhMGなどの排卵刺激薬を用いないで採卵し、体外受精で精子と培養した受精卵を戻す方法です。最近では本法は当初はPCOなどの患者さんに未熟卵のうちに採取して、体外で卵を成熟させてから体外受精を行う方法(IVMと言います)で行われていましたが、いくつかのクリニックでは、全くの自然周期での排卵時成熟卵(通常は1個)を採取、受精させ戻す方法が行われています。また連日注射刺激ではなくクロミッドなどの低刺激について、自然周期というと表示するところもあります。当初この方法が採用された背景には、注射刺激による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が頻発、重症化する例が少なくなく、OHSS発症を減らす目的で行われ始めましたが、この方法がより自然に近いとのことで、共感するむきも少なくないようですが反対論もあります。体外受精の歴史をみると、最初の時代にはすべて自然周期での採卵で行っていたのであり、その妊娠率の低さ、効率の悪さなどから、現在の方法へと少しずつ進化してきたわけですから、この方法は時代を逆行するとの批判もあります。また自然が良いといっても、多くのARTの患者さんは自然妊娠が出来ないからARTへと治療を進めて来た事を考えると、この批判にも一理あるかとも考えます。現在では、体外受精の妊娠率は刺激方法で左右されるのではなく、いかに良好の卵が得られ、最終的に元気な赤ちゃんとともに帰宅できるかが問題です。2015年の世界の生殖医療系学会のメインテーマは良い卵を選択するための方法論が中心でした。PGSでの正常染色体選択移植・タイムラプスなどでのより形態良好卵・正常分割経過卵の選択移植などが医師の間での議論の主流となっています。現在では少なくともある年齢(35歳)以上の方は、明らかに持っている卵子の数の減少と質の低下が妊娠率・出産率の低下に結びついているので最近増加している高齢ART患者さんへの自然周期採卵か、刺激周期採卵かの議論はあまり意味がありません。いかに出産率向上に結び付く卵を採取し移植に結びつけるか最重要です。ということはそれぞれの患者さんの背景に最も合った方法を選択出来ることが医師の経験と技術ともいえます。

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