着床障害に関する最近の進歩は?
なかなか妊娠に成功しない難しい不妊症の原因は①受精障害、②精子、卵子、受精卵の異常、③着床障害といわれています。この中で現在までその対応がなかなか難しかったのが③の着床障害です。着床の窓という概念が以前よりあり、この時期に受精卵と子宮内膜が丁度マッチすることで着床すなわち妊娠が成立することは判明していたわけですが、これを確定する有効な臨床検査がなかなか無いために確実な治療法が存在しませんでした。子宮内膜を直接観察する子宮鏡により肉眼で内膜の状態観察(ポリープ、癒着、凸凹など)で着床因子を検討することや、子宮内膜日付診といって着床期の内膜を一部採取して顕微鏡的に調べる方法がありましたが、これらに異常がなかった場合などでは、有効な打つ手がないのが現状でした。しかし最近の遺伝子分析進歩により、着床期に最適の時期を示す指標として開発されたのがERA(endometrial receptivity analysis)法で「子宮内膜着床機能検査」といわれ、内膜の着床に適した236個の遺伝子を調べることで、その患者さんの最適の着床期を探し出すことが出来る方法です。また着床期に特有に現れるNCS(nucleolar channel systems)という膜様構造物が胚の内膜受容期のみに発現することが判明し、月経周期20日目でピークとなり、妊娠中は消失することが判ってきており、ERAともよく相関することが判明してきています。このERA検査で99.1%の方の着床の窓;すなわち自分の最適な移植日を知ることが出来るといわれ、最近日本でもこの検査が出来るようになってきたためにその使用報告も見られてきています。このように従来もっとも困難と考えられていた着床障害の治療も大きく進みそうです。〔本欄Q&Aの着床障害の稿もご覧ください)