男性不妊と亜鉛欠乏症の関係は?
成人男性の体には2gの亜鉛が含まれており,その分布は歯、肝臓、精巣などに見られます。亜鉛は人にとり必須微量ミネラルであり、亜鉛が欠乏すると成長に遅れがあり、性的成熟の遅れ、性腺機能低下症、乏精子症、味覚鈍麻などが見られます。また思春期の男子で「亜鉛欠乏症」と診断された子供に十分な亜鉛を含んだバランスの良い食事で1年間治療をしたところ、陰毛が現れ、生殖器官が大きくなり、成長が再度始まったことで最近不妊領域でも低亜鉛血症が注目される様になってきました。しかし特殊な病態にために一般臨床医にはあまり知られておらず、見逃されている可能性があります。「亜鉛欠乏症」と診断されたときには食事療法やサプリメントの摂取では改善されないことも多く、亜鉛製剤での薬物治療が必要となります。診断には血液中の亜鉛濃度測定が必要で保険での検査適応があります。血清亜鉛濃度が60μg/ml未満なら低亜鉛血症であり亜鉛の投与が保険で認められます。しかし過剰投与となると重大な副作用がある場合もあり必ず血液中の濃度を測定しながら、医師の指示の元で服薬治療が必要です。この面からは自己診断による亜鉛の服用は危険ですので、乏精子症やテストステロン(男性ホルモン)低下を認める男性不妊患者さんも、必ず医師に血液中の亜鉛濃度の測定を受けてから必要に応じて亜鉛薬剤服用を行う必要があります。