最近よく耳にする受精障害、着床障害とは?
受精障害について
最近精液検査で形や数、運動能は正常で、排卵もあって、AIHをくりかえしても妊娠しない症例の中に、いわゆる受精障害といわれる病態があります。
精子の輸送や、卵の取り込みなど卵管の機能異常などが原因のひとつとして、考えられています。更には精子または卵そのものの異常が考えられます。
- 卵管の異常については、癒着、感染症、免疫抗体の関与、軽い子宮内膜症によるものなどの問題点があります。
- 卵自体の異常としては、卵の透明帯や細胞質、ときには染色体の異常などが原因としてあることが判明しております。
- 精子については精子の頭部の酵素異常などの機能障害が問題となります。
これらのいわゆる受精障害は、 体外受精を実施する事によって判明してきた事実ですので、長期の不妊(原因不明不妊症や、AIHで成功しないような方)は、一度IVFを試みて受精障害の有無について検討することも必要です。IVFでは、卵そのものの形態の良し悪し、受精の有無、その後の分割などに異常が無いかなど、通常の検査では行えない検査的治療が可能です。
着床障害について
現在もっとも治療の困難なのがこの着床障害です。着床の場である子宮内膜側の条件として黄体ホルモン(プロゲステロン)の異常によるものが多いと考えられ、ホルモン補充療法がおこなわれ、その妊娠率は48%ぐらいです。
子宮そのものに原因のある場合(子宮筋腫、子宮内癒着、子宮内膜炎などの感染、子宮奇形、子宮腺筋症など)はそれらの原因に対する治療が必要となることがあります。
また、良い受精卵ほど十分で着床因子(糊のようなもの)を出しながら子宮内膜に向かいますので、良い卵を排卵させることも前提条件となります。通常の体外受精で妊娠しない例の中には、多くの着床障害が存在すると考えられており、胞胚期と言われる細胞分裂がかなり進んだ段階での移殖や、卵に穴をあけて着床させやすくする方法など(「Assited Hatching(AH)とは何でしょうか?」参照)が試みられています。