最近の更年期障害での漢方療法について教えてください。
江戸時代以来、更年期障害は「血の道症」と称されており、この血とは血液そのものでなく、血の状態すなわち「どろどろ」や「さらさら」、更には貧血の有無などを総合したものと考えられます。
また中医学では「腎のおとろえ」すなわち全身の生命力の低下により月経が停止し、十分な栄養を顔面に与えられないため「しわ」が増え、頭髪には白毛が増え、子宮も老化すると考えられます。
これを現代医学的に解釈すると、女性ホルモン産生の低下が引き金となる血流不全や体内細胞の老化、すなわち体内の活性酸素の増加と抗酸化力の低下による諸症状とも言えます。
この状態を改善するには活性酸素を抑える事と血流の改善がます大切です。
また体肥満率、特に内臓脂肪が上昇すると更年期の症状悪化に結びつくため、この予防も重要です。
これらから漢方療法を考慮すると、血流改善には当帰勺薬散や加味逍遙散などが用いられ、特に「血滞」と言われる「どろどろ」状態には桂枝伏苓丸、また血流不全に伴う耳鳴りには苓桂求甘湯、更に頭痛やめまいなどの不定愁訴には釣藤散・葛根湯などが有効と言われています。
しかし更年期の発汗、ほてりなどの初期症状は漢方よりもホルモン療法が有効な事が判明しており、ホルモン療法で落ち着いたら漢方療法へ変更する事もよく行われています。
いづれにしても背景には食生活が密接に結びついているので、この面での注意も必要です。