最新のホルモン補充療法と日本人での乳癌発生の関係はどうなっていますか?
ホルモン補充療法(HRT)が乳癌を増加させるか否かについては、まだ確実な証拠が存在しないと考えられております。
しかし、2002年8月の米国におけるWHI大規模臨床試験(主目的はHRTで米国人女性死因の第一位である心血管疾患を防げるか否かの検討)で、乳癌発症と血栓症が予測数より増加した事を理由に一部試験が中断され、全米的、全世界的に波紋と混乱を生じたことはご承知の事でしょう。
しかしこの内容がその後よく検討され、実際は平均年齢61歳で糖尿病や喫煙者、肥満の割合が多く、もともとHRTの対象とならない患者さんが多く、特殊な例に対する投与例であったことか判明し、ヨーロッバなとでは比較的冷静に受け止められ、日本でもこれを契機に日本人でのHRTと乳癌発症の検討が行われており、2005年12月4日の朝日新間に厚労省研究班調査の中間解析が出ており、驚くべきことに、日本人ではHRT経験者の方が乳癌リスクは33%も低くなると報告され、しかも使用群の半数は一年未満と、全く米国のデータと相反する報告がされています。
もともと白人に比べ日本人は乳癌が1/8と少なく、また大豆製品などを多く摂ることなどもあり、日本人にHRTによる乳癌発生数が増加するかは、まだ疑問もあり、未解決の問題です。
同じ傾向は当院の1500人の検診でもみられ、HRT群より2例(0.8%)一般検診群11例(1.1%)とHRT群での乳癌発生は少ない傾向にあります。
いすれにしても、きちんとした検診を受けましょう。