メニュー

大隅良典教授の医学生理学ノーベル賞受賞を祝う

[2016.10.11]

今年の医学生理学ノーベル賞は東工大の大隅教授に決定した。日本の基礎研究が大いに評価された結果であり2012年の山中教授、2015年の大村教授に続いての日本の医学・生理学の基礎研究の底力が示されたことで医療の末端で暮らす小生のような者でもなんとなく嬉しいことである。しかし日本の医学関係の現今の研究は性急に結果を求める日本人の風潮から、大隅教授も言われるように現在の若い研究者の中から将来もこのような賞が続出するとは考えられず、浮かれてはいられないであろう。恩師の鈴木雅洲教授が1983年日本で始めて体外受精に成功したときには、「神の手を汚すな」との批判がマスコミはじめ、仲間内の産婦人科医からも多くでて、私たちのグループが1988年に日本で初の「凍結受精卵の臨床応用」に入ったときにも、国会で変性卵を戻して異常児が生まれたら責任はどうするなどの質問・非難が議員からなされたり、当時の文部省から事情聴取を受けたことを思い出します。現在では体外受精法も、凍結卵移植法も普通の不妊治療として施行され、不妊患者さんにとって福音となっていますが、不妊の技術・臨床応用には、それに先立つ畜産学や生物学の基礎的研究があってこそなのであることをもう一度みんなで見直すべきでしょう。特に山中先生のips細胞では網膜治療の臨床応用が始まり、不妊領域でもすでにヒト精子や卵子まで作成することが可能(臨床応用は不可)、今回の大隅先生の「オートファージー」現象も細胞の老化や受精卵の正常発達に重要な働きを有することが推定され、これからの不妊治療に大きな示唆と希望を与えてくれるものと思います。議論も倫理も大切ですが、この日本で発見発展された基礎研究が日本の不妊患者さんにもしっかりと治療に応用できる日が来ることを願ってやみません。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME