国の不妊治療保険化の動き(院長コラム)
2020年菅内閣成立により、少子化対策として高度不妊治療を保険に取り入れる動きが活発化しています。すでに2021年1月以降終了した症例はすべてに所得制限が撤廃されており、体外受精・顕微授精を受けるすべての夫婦が補助金を受けることが出来、金額も1回30万円が6回迄減額されずに支給され、一度分娩を経験すれば新たに再度6回の助成が受けられる等の大幅な拡充がなされました。まだ43歳以上は適応がないなどの年齢制限は残りますが、この動きは大きく現在の患者さんには経済的に福音となると思われます。来年2022年4月には従来の全額自費治療より保険適応治療へと移行する可能性があります。先ごろART施設へのアンケート調査があり、現在のART施設の概要の一部が判明してきております。現在日本にある622施設(過去最高で、世界でも一番多い施設数です)への調査より現在の料金は新鮮胚移植中央値で37~51万円、凍結胚移植中央値で43~58万という料金表が出ています。全体では10万円代~100万円までに広く分布しており、治療のオプションや、地域により内容も様々ですので、どのあたりに保険適応を収束されるのかまだまだ難問は山積の様ですが今年夏ごろには生殖医学会を中心に目安がつけられるようです。もう一方の動きは生殖補助医療法制定の動きです。他人の卵と夫の精子で受精した卵を自分の子宮で育て分娩した児の戸籍上の問題など。従来よりいろいろ国会では議論されてきていますが今回の保険適応とともにある程度整理されることが期待されています。いずれにしても簡単に決められる事柄ではありませんので、医療側も患者さん側も成り行きを注視するともに、自らも自己の思いを披歴する議論に参加する勇気が必要でしょう。