受精卵スクーリニング(PGS)について
最近日本産科婦人科学会で臨床検査としてPGSを行うとの報道がなされ患者さんからの質問も多くなってきております。PGSとは受精卵(最近は胚盤胞)の細胞を一部採取して、培養を行いその全染色体を調べ、染色体の異常を認めない卵のみを移植する方法です。以前に日本で一部の施設で行われこの方法が有効ではないとの結果が出たために、進行しませんでしたが、これは検査法に問題があり(FISH法という、細胞の一部の染色体をマーカーとする検査法を用いたために、有効の結果が得られなかった)ここ3年ぐらいの間に世界の生殖医学の分野では遺伝分析学の進歩で、全染色体の検査法が進歩して、世界中で急速に行われ始め、多くの症例の積み重ねによって,頻回の流産や体外受精で妊娠しない例に有効であるとのデータが集積されつつあり、人口からみるとアシアを含め世界人口の95%がこのPGAの恩恵を得られているといわれています。すでに一部のクリニックでは日本においても行われているところもありますが、公式には学会のプロジェクトとしてはまだ開始されていないようです。この背景として、倫理的問題が日本ではなかなか同意が得られず学会が踏み出さないからと考えられます。従来の欧米の集積データよりみると20代の受精卵では異常染色体受精卵は極めて少ないのに30代では30~40%、40代では50~70%もの異常染色体受精卵が存在するといわれます。またこの異常の原因は卵のグレードの良しあしや、自然が良いとかの採卵方法とは関係なく、年齢による卵質の低下や分割活性能や、配偶子の異常によることが推定されています。高齢不妊が増加する現在PGSはこれから広く採用される可能性がありますが、検査料やその信頼度などまだ検討すべき問題も残っています。