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体外受精で成功するための条件(英国の報告より)

[2016.12.13]

世界で最初に体外受精児が誕生した英国のもっとも権威ある雑誌BJM(British Joutnal of Medicine ;2,016年11月号)に10年にわたる体外受精(IVF-ET またはICSI)で分娩まで成功した113,873例(184269周期)の詳細な分析結果が報告されています。われわれARTにかかわる医師にとって、また受療する患者さんにとっても多くの示唆を与えてくれるものでここに概要をお示します。まず治療開始前の条件ではで妊娠・分娩に成功した群では女性の年齢(31歳対37歳);30歳を過ぎるとチャンスは減少、不妊期間(3年対6年;期間雅長くなるほど線状に低下)が成功予後の予測因子として重要であり、治療後(IVF終了後)の予測因子では、採卵できた卵の数(13個対6個:13個までは数が多いほうが出生率を改善)、その周期で受精卵が凍結できたかどうか、女性年齢、受精卵の移植時のステージ(胚盤胞移植か初期胚移植か)によって明らかな出産率に差があるとしています。もし30歳で2年間の原因不明不妊症の方は、最初のIVFで46%の挙児率があり、3回目までのIVF終了時で79%に出生児を得ることが出来ます。しかし同条件の女性が、5個の採卵で、1個の新鮮初期胚移植をして、凍結卵がない場合にはその挙児率は28%~56%と低下します。治療前で卵管因子と男性因子のある不妊症は、原因不明不妊症や無排卵例と比較すると約10%の挙児率低下が見られるといいます。ICSI受療患者さんは通常のIVFを受療した方より24%挙児率が上昇すると報告されています。もっとも成績の良い群は30歳で卵管因子はなく、15個の卵が取れて、凍結卵保存が可能で、最初の移植で胚盤胞移殖が可能であった例であり、予後不良例は40歳で5個の卵を採取できたが凍結できず、初期胚移植した群は成績が不良であった。これらの報告は私たちが日常実感していることとほぼ同じであるが、現実はやはり厳しいとの事である。さらに最近では。AMH測定、D3のFSH,E2値や胞状卵胞数(AFN)などが卵巣予備嚢予測に用いられ、より精密な予測も可能となってこよう。いずれにしてもAMHが良い若年では、最卵数も多く、染色体異常卵も少なく、内膜も厚いので、当然妊娠率は高いが、高齢になると採卵数減少とともに受精卵染色体異常が高率に起こるので、やはり出来れば現状ではどの年齢でも、多くの卵採取を目指すのが妊娠の可能性を高めると考えられます。英国ではIVFで自然周期・低刺激採卵はほとんど行われていません。その理由は上記のように採卵数が多いほど結果的に挙児率が高いからで、当院でも出来るだけ1回の採卵で多く採卵できる方法を模索しております。

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