ミトコンドリア注入療法とは?
ミトコンドリア(MC)とは卵の細胞質に存在する小器官で、独自のDNAを有しており細胞に蓄積された糖質などの栄養素を分解して、細胞を働かせるためのエネルギーを産生したり運ぶために活動していると考えられています。すなわち細胞の老化はこのミトコンドリアの減少や活力の減弱に結びついているわけです。特に精子や卵子などの生殖に関係する細胞にはこのミトコンドリアが多量に存在するため、細胞の活力・老化と密接に関係しています。現在不妊症女性の高齢化に伴う卵の老化は、実はこのミトコンドリア活性や、数の減少・活力の低下が関与していることが判明しており、これを改善することで卵子の若返りを図り、妊娠率の上昇へ結びつけようとするのがミトコンドリア注入療法です。具体的には患者本人の卵巣より腹腔鏡にてあらかじめ取り出して抽出したミトコンドリアを、顕微授精時に細胞内に注入する方法が採用され、すでにヨーロッパを中心に数百例に試みられ、1割以上の妊娠例があるといわれております。ミトコンドリアには、その人独自の遺伝子が存在するために、他人のミトコンドリアを使用すると遺伝子が混在してしまうために、原則本人のMCが使用されます。MC注入療法は日本国内でもすでに一部で臨床応用が行われています。また日常生活で細胞内のミトコンドリア(MC)を増やしたり、減少を防げないかとの試みもありますが、MC含有のサプリメント使用には懐疑的です。現在細胞老化を防ぐのは抗酸化物質といわれていますので、食事やある種のサプリ(VC,VE,カテキン、ポリフェノールなど)の抗酸化物質の摂取は有効である可能性があります。喫煙は細胞へのMCとは逆の老化促進物質ですので禁煙は必ずいたしましょう。