
子宮頸がん検診でひっかかる原因とは?精密検査の方法や対策を解説
公開日:2025.06.19更新日:2025.06.19
子宮頸がん検診で「要精密検査」の結果を受け取ると不安になりますが「要精密検査」と「がん」は同義ではありません。多くの場合はHPV(ヒトパピローマウイルス)感染や、その他の要因が考えられます。精密検査が必要な方のうち、実際に子宮頸がんと診断される方は多くはありません。
精密検査を先延ばしにすることで子宮頸がんに進行する可能性もあるため、精密検査を受けることは重要です。この記事では、子宮頸がん検診でひっかかる原因や精密検査の方法、子宮頸がんを予防する対策まで解説します。HPVワクチンや定期検診の重要性など、あなたの健康を守るための情報が満載です。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、子宮の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
子宮頸がん検診でひっかかる5つの原因
子宮頸がん検査でひっかかる原因は、以下の5つが考えられます。
- HPV感染
- 炎症や性感染症
- ホルモンバランスの変化
- 採取方法の問題
- 子宮頸部の前がん病変やがん
HPV感染
子宮頸がんの主な原因は、HPVへの感染です。HPVはありふれたウイルスで、性経験のある女性の約80%が一生に一度は感染する可能性があると言われています。HPVには100種類以上の型があり「ハイリスク型」と呼ばれるものが子宮頸がんと強く関連しています。
中でも16型と18型は、日本の子宮頸がんの約7割の原因とされる型です。HPVに感染しても、ほとんどの場合は免疫の力で自然に排除されます。しかし、ハイリスク型のHPV感染が長期間続くと、子宮頸部の細胞が徐々に変化し、前がん病変、がんへ進行する可能性があるため注意が必要です。
炎症や性感染症
子宮頸がん検診で要精密検査になる原因は、HPV感染以外にも、炎症や以下の性感染症が考えられます。
- クラミジア
- カンジダ
- トリコモナス
性感染症にかかると、子宮頸部の細胞に炎症が起こり、細胞診で異常と判定されることがあります。性感染症は自覚症状がない場合もあり、気づかないうちに感染している可能性もあります。適切な治療を行うことで改善するため、放置せずに医療機関を受診することが大切です。
性感染症はパートナーにも感染している可能性があるため、一緒に治療を受けることが重要です。
ホルモンバランスの変化
女性の体は、以下のライフステージによってホルモンバランスが大きく変化します。
- 妊娠
- 出産
- 閉経
- ピルの服用
ホルモンバランスの変化も、子宮頸部の細胞に影響を与え、検診結果に影響することがあります。妊娠中は子宮頸部の粘液が増え、細胞診の結果が特に変化しやすいです。閉経後は子宮頸部が萎縮し、細胞診で異常と判定されるケースもみられます。
ピルの服用もホルモンバランスに影響するため、検診を受ける際は医師にピルの服用の有無を伝えましょう。
採取方法の問題
採取方法に問題がある場合、正確な検査結果が得られないことがあります。子宮頸がん検診は、子宮頸部の細胞をブラシなどで優しくこすり取る検査です。子宮頸部の細胞を採取する方法に問題があると、十分な量の細胞が採取できなかったり、出血が混ざったりします。
子宮頸部が奥に位置している場合や、子宮頸部が炎症を起こしている場合などは、細胞採取が難しいことがあります。十分な細胞が採取されなかった場合は「判定不能」となり、再検査が必要です。痛みや出血を伴うことはほとんどありませんが、出血が多い場合は医師に相談してください。
子宮頸部の前がん病変やがん
子宮頸がん検診で要精密検査となる最も深刻な原因は、子宮頸部の前がん病変やがんです。前がん病変とは、がんになる前の状態のことです。子宮頸がんは、正常な細胞から前がん病変を経て、徐々にがんへと進行していきます。
検診で前がん病変が見つかった場合でも、早期に適切な治療を行うことで、がんへの進行を予防できる可能性が高いです。がんへの進行予防のために、早めに精密検査を受けましょう。子宮頸がんは早期発見、早期治療が大切です。
精密検査の方法
精密検査は、子宮頸部の状態をより詳しく調べるために行うもので、早期発見・早期治療につながる重要なステップです。精密検査の方法は、以下のとおりです。
- コルポスコピー検査
- 組織診
- HPVタイピング検査
- 円錐切除
コルポスコピー検査
コルポスコピー検査は、拡大鏡を使って子宮頸部を詳しく観察する検査です。子宮頸部を酢酸という液体で濡らし、血管の様子や病変の有無を確認します。さらにヨウ素溶液を塗布することで、正常な組織と異常な組織を区別しやすくなります。
検査時間は5〜10分程度で、痛みには個人差がありますが、多くの方は軽微な不快感程度です。コルポスコピー検査は、肉眼では見つけにくい小さな病変も発見できるため、子宮頸がんの早期発見に有効です。検査結果によっては、組織診が必要となる場合があります。
組織診
組織診は、コルポスコピー検査で異常が疑われる部分の組織を少量採取し、顕微鏡で細胞を調べる検査です。採取する際の痛みはチクッとする程度で、通常は出血も少量ですぐに止まります。採取した組織は、病理医によって詳しく検査され、がん細胞の有無や異形成の程度が診断されます。
組織診は、子宮頸部の状態を細胞レベルで確認できるため、より正確な診断に不可欠です。コルポスコピー検査で異常が見つかった方のほとんどが、組織診を受けることになります。検査結果は1〜2週間程度で判明します。
HPVタイピング検査
HPVタイピング検査は、子宮頸がんの原因となるHPVの型を特定する検査です。子宮頸部から採取した細胞を用いて、HPVタイピング検査を行います。痛みはほとんどなく、検査時間は短いです。検査結果は通常1週間程度でわかります。ハイリスク型のHPVが陽性だった場合でも、すぐにがんになるわけではありません。
多くの場合、免疫の力でウイルスは自然に排除されます。HPVに持続的に感染している場合は、子宮頸がんのリスクが高まるため、定期的な検査と経過観察が必要です。
円錐切除
円錐切除は、子宮頸部の一部を円錐形に切り取る手術です。主に中等度以上の異形成や、組織診でがんが疑われる場合に行われます。円錐切除は、以下の2つがあります。
- 電気メスを用いるLEEP法
- メスを用いる従来法
LEEP法は出血が少なく、手術時間も短い点がメリットです。円錐切除で切除した組織は、病理検査に提出され、確定診断を得られます。円錐切除は治療を兼ねた検査であり、病変部を取り除くことで、がんの進行を防ぐことができます。手術は日帰りまたは短期入院で行われ、入院期間は数日〜1週間程度です。
術後は出血や感染症などの合併症に注意が必要で、妊娠を希望する場合は医師とよく相談することが重要です。円錐切除については、2022年版の子宮頸がん検診ガイドラインに記載があります。ガイドラインでは、HSIL(高度扁平上皮内病変)やAIS(上皮内腺がん)と診断された場合は、円錐切除が推奨されています。
精密検査を受けることは、早期発見・早期治療のために重要です。それぞれの検査方法の特徴を理解し、安心して検査に臨んでください。
以下の記事では、子宮頸がん検診を受ける際に気になる「費用」や「保険適用の条件」、「無料で受けられるケース」について詳しく解説しています。受診前に知っておきたい経済的なポイントを押さえておきましょう。
>>子宮頸がん検診の費用はいくら?保険適用・無料になる条件も解説
子宮頸がんを予防する対策
子宮頸がんを予防する対策は以下のとおりです。
- HPVワクチンの接種
- 定期的な子宮頸がん検診の受診
- 禁煙
- コンドームの使用
- 生活習慣の改善
HPVワクチンの接種
HPVワクチンは、ハイリスク型のHPV感染を予防するワクチンです。現在、日本では2価、4価、9価の3種類のHPVワクチンが使用されています。それぞれ予防できるHPVの型が異なり、9価ワクチンはより多くの型をカバーしています。
HPVワクチンは定期接種に含まれており、対象年齢の方であれば公費での接種が可能です。定期接種の対象年齢を過ぎた方は、原則として自費での接種となりますが、自治体によっては独自の助成制度がある場合もあります。接種費用の助成については、お住まいの自治体にご確認ください。
ワクチン接種は任意ですが、子宮頸がん予防において一定の効果の報告があり、WHO(世界保健機関)も接種を推奨しています。
定期的な子宮頸がん検診の受診
子宮頸がんは、定期的な検診を受けることで、がんになる前の段階である前がん病変を発見し、適切な治療を行えます。子宮頸がん検診は、子宮頸部から細胞を採取し、顕微鏡で観察することで異常がないかを調べます。検診自体は5分程度で終了し、痛みもほとんどありません。2年に1回の受診が推奨されています。
子宮頸がんは自覚症状がないまま進行することも多いため、定期的な検診が早期発見の鍵となります。検診を受けることで、将来的な不安を軽減し、健康管理に役立てましょう。
以下の記事では、子宮頸がん検診をどのくらいの頻度で受ければ良いのか、年齢別に適したスケジュールを解説しています。検診を受けるタイミングに迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
>>子宮頸がん検診の頻度は何年ごとに受けるべき?年齢別の適切なスケジュール
禁煙
喫煙は、子宮頸がんを含むさまざまながんのリスク要因です。タバコの煙に含まれる有害物質は、子宮頸部の細胞を傷つけ、HPVに感染しやすくなる可能性があります。タバコの有害物質は、免疫機能を低下させ、がんの発症を促進するリスクも考えられます。
禁煙は子宮頸がんの予防だけでなく、全身の健康維持にもつながる取り組みです。禁煙は容易ではありませんが、禁煙外来などのサポートを活用しながら、積極的に取り組むことをおすすめします。
コンドームの使用
HPVは性行為によって感染するため、コンドームを正しく使用することは感染リスクを低減するうえで有効な手段です。コンドームは他の性感染症の予防にも効果が期待できます。ただし、HPVは性行為だけでなく、皮膚接触によっても感染する可能性があります。
コンドームだけで、HPV感染を完全に予防できるわけではありません。コンドームだけでなく、他の予防策との併用が重要です。
以下の記事では、性行為未経験の方でも子宮頸がん検診が必要とされる理由や、受診時の注意点について詳しく解説しています。不安や疑問がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
>>性行為未経験でも子宮頸がん検診は必要?受けるべき理由と注意点
生活習慣の改善
健康的な生活習慣を維持することは、免疫力を高め、がんを含むさまざまな病気の予防につながります。生活習慣の改善には、以下のことを心がけましょう。
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- ストレス解消
過剰なストレスは免疫力を低下させ、さまざまな病気のリスクを高める可能性があります。リラックスする時間を作ったり、趣味を楽しんだり、自分なりのストレス解消法を見つけることも大切です。
まとめ
子宮頸がん検診で「要精密検査」になると、多くの方が不安になります。しかし「要精密検査」が必ずしも「がん」である訳ではありません。子宮頸がん検診で「要精密検査」になる場合は、以下の原因が考えられます。
- HPV感染
- 炎症や性感染症
- ホルモンバランスの変化
- 採取方法の問題
- 子宮頸部の前がん病変やがん
子宮頸がんは早期発見、早期治療のためにも、精密検査でより詳しく調べることが大切です。子宮頸がんの予防対策として、HPVワクチン接種や定期的な検診、禁煙など、できることから始めて自分を守りましょう。検診結果に不安を感じたら、ためらわずに医師に相談してください。
以下の記事では、生理中に検診を受けることのリスクや、検査に適さないタイミング、予約時に気をつけたいポイントについて詳しく解説しています。検診を予定している方は、事前に確認しておくと安心です。
>>子宮頸がん検診は生理中でも受けていい?NGなタイミングと注意点を解説
参考文献
- Harper DM, Navarro-Alonso JA, Bosch FX, Paavonen J, Stanley M, Sasieni P, Yébenes M, Martínez-Martínez N, Rodriguez A, García A, Martín-Gomez L, Vallejo-Aparicio L, Carrión H, Ruiz García Y.Impact of human papillomavirus vaccines in the reduction of infection, precursor lesions, and cervical cancer: A systematic literature review.Hum Vaccin Immunother,2025,21,1,p.2497608
- Huang CM.Human papillomavirus and vaccination.Mayo Clin Proc,2008,83,6,p.701-706
- Taguchi A, Yoshimoto D, Kusakabe M, Baba S, Kawata A, Miyamoto Y, Mori M, Sone K, Hirota Y, Osuga Y.Impact of human papillomavirus types on uterine cervical neoplasia.J Obstet Gynaecol Res,2024,50,8,p.1283-1288
- 日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会・子宮頸癌治療ガイドライン改訂委員会(編).子宮頸癌治療ガイドライン 2022年版.日本婦人科腫瘍学会,2022年7月15日.
- Bonanni P, Faivre P, Lopalco PL, Joura EA, Bergroth T, Varga S, Gemayel N, Drury R.The status of human papillomavirus vaccination recommendation, funding, and coverage in WHO Europe countries (2018-2019).Expert Rev Vaccines,2020,19,11,p.1073-1083
- 厚生労働省:がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針