男性不妊
不妊症の半分(50%)は男性側にあります。したがって不妊原因を確認するには必ず男性側精子、性機能のチェックが必要です。基本は精液検査であり結果はその都度個人差や環境などで変化することもありますが、2回検査で異常を認めた場合には乏精子症、精子無力症、精子死滅症、無精子症などに分類され、さらにホルモン検査などの精密検査が必要になります。精子数が5×106/ml以下の場合は重症乏精子症として取り扱われます。検査によりまず原因評価が行われ、治療方針が決定されます。原因としては睾丸の機能不全、精路通過障害、勃起、射精障害などの性機能障害、陰茎奇形などによる性交障害などに分類されますが、当初の初期検査は産婦人科が対応することが多いのですが、重症例や複雑な原因では不妊を専門とする泌尿器科医(生殖医療専門医)との共同治療となることもあります。また染色体や遺伝子検査などの遺伝カウンセリングを必要とする検査が必要なこともあります。最近では、精子が見られない無精子症でも睾丸よりの精子採取(TESEという技術)により、顕微授精にて妊娠できる例も多くみられるようになりました。最も多い乏精子症や有効精子の少ない精子無力症には、薬物療法がおこなわれますが,その有効率は20%程度であり、漫然と治療を長引かせないで、少ない精子を有効に使うAIHや顕微授精などの補助生殖医療が必要となることがあります。
まず最初に精液検査からスタートします(Q&Aの精液検査の項参照)。全体で48%の方はこの検査では特に問題がないと判定されます。この場合でも卵活性化因子低下や、頭部の遺伝子異常などが隠れていることがあり、妊娠に成功しない場合は必ずより精密な検査や実際のART施行による受精現象の確認が必要となることがあります。全体の26%が精子性状に問題ありとされ、このうち12%は乏精子症、7%が奇形精子症、4%が精子無力症であり、精巣静脈瘤が12%、感染が12%に見られ、先天性とEDが各々2%、またホルモン因子が0.6%あるといわれています(University of Leed)。気をつけなければならないのは3分の1のカップルは夫婦両方に不任原因があることで、男性側の原因のみではなく、カップルとしての検査・治療が必要です。男性不妊症の治療上のキイポイントは次のような事です
1.健康に配慮し、喫煙・アルコール摂取を制限する
2.低ホルモン症(MHH)はホルモン療法(HCG-FSH注射療法:保険適応あり)を受ける
3.原因不明男性因子は薬物療法に反応し難いので、早めにARTを選択
4.感染症は抗生剤の投与を長めに受ける
5.精巣静脈瘤の手術療法はすべての症例には薦められない
6.抗精子抗体陽性者は早めにARTを選択
7.血中FSH上昇患者でもTESEで精子獲得可能な場合があり、専門医と相談する
8.AID(非夫婦間人工授精)は最終的な選択肢として存在する
2020年4月よりはソフィア院内に男性不妊専門外来を開始いたしました。泌尿器専門医であり、生殖医療専門医の資格を持つ医師が直接診察を行います。新患・再来問わずどなたでも受診できますのでお申し出ください。また手術的治療が必要な方はスムースに横浜市大生殖医療センターで施術が受けられます。