中高年外来診療について
最新の更年期医療情報
もっとも新しい更年期周辺の予防的治療について
2002年8月にアメリカNIH(厚生労働省にあたる)が、10年間行なわれてきた健康女性に対するホルモン補充療法の大規模投与試験の一部を中止するとの報道がマスコミに出て、色々な混乱が見られました。内容的には乳癌発症と、静脈血栓症が当初の予想より増加したためとされ、その他の骨粗鬆症や大腸癌の減少は明らかなので子宮の無い人に対するホルモン治療は継続されています。もともと乳癌と血栓症はアメリカ白人には日本人より3~8倍多いとされています。そこで現在では、このデータをすぐ日本人に当てはめる事は出来ないので、日本産科婦人科学会や日本女性医学会(旧日本更年期医学会)を中心に日本人を対象にした検討と治療が行なわれています。特に最近ではエストロゲン製剤が各種使用可能になり、ジェル塗布法やパッチ法、経膣挿入剤などの天然エストロゲンが健康保険で使用可能になり、より安全で効果が高く、副作用の少ない薬剤が使われるようになり多くの患者さんに再びHRTは受け入れられてきております。
いずれにしても、日本でも従来のHRTがより安全に有効に行なえるような時代が来ています。植物由来のエストロゲンである大豆イソフラボン摂取による方法でも、より純粋なエクオールが出現して、女性ホルモン(エストロゲン)とその構造式が似ているためにホルモン様作用のほか、抗酸化作用も期待でき、更年期障害の改善や骨粗鬆症の予防の他、癌や動脈硬化など生活習慣病の予防効果についても一般に報告されてきています。現在のところ、この大豆イソフラボン系統については、エストロゲンが持つ癌促進などのマイナス作用は確認されていないので、21世紀の女性の健康維持に欠かせない物質になるのではないかと期待されています。
さらに近年は女性ホルモン製剤の進歩で、従来のような合成の強力ホルモンや、プレマリンのような複合剤ではなく、天然の女性ホルモン剤が保険適応使用できるようになり、経口だけではなく、経皮吸収パッチ・ゲル剤など安全性がより高められ、しかも使用中のホルモン測定にて、年齢に応じた必要量を確認しながら、年齢に合わせての使用ができるようになっています。このためには生殖内分泌を良く知る専門医を選ぶことが重要です。女性ホルモンイコール癌になるというのは現在の医学ではありません。十分主治医と話し合いましょう。
中高年外来診療の流れ
実際の当院での中高年女性の健康チェックは下図のように行われています。
これらは全て行うわけではなく、必要に応じて選択されます。薬物療法を行っている患者さんは、定期的に当方で健康チェック、癌検診などを行っています。また血流検査(血管年齢)・血液検査(女性ホルモンレベル・貧血の有無・高血圧・高脂血症・血管年齢の形態など)・体組成測定(BCA)や骨量の増減などは年1~2回チェックが必要です。これらは自分の健康が自分の目で確認できるので好評で、当院で中高年女性を対象に全て可能です。
女性の一生は45歳から約10年間の更年期時代で終わるわけではありません。更年期をうまく乗り越えた方はそれに引き続く高年期(老年期)も健やかに過ごせます。老後の安らかさに引き継がれる更年期での生活の質を担保出来るか否かは実は更年期の時代の過ごし方にあります。そのためには上手に人生の秋~冬の時代を対象にした中高年女性医療を利用しましょう。
体重・骨量・皮下脂肪・内臓脂肪のコントロールが重要です
当院では2005年3月より、最新の体組成計(Body Composition Analyser)を用いて、不妊患者さん、更年期女性の肥満だけでなく、大切な体全体の組成分析を行い、より有効で生活の質を高める治療と生活指導を開始しています。詳細は当院外来でおたずね下さい。成人病検診がいわゆるメタボ検診に変わりましたが、これで多くの体の情報を知ることができます。